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愛と義のまち米沢エッセイコンテスト 金賞受賞作品一覧
第4回 金賞『車内の情景』 戸澤三二子さん(愛知県)
 昨年の六月半ば頃。山形新幹線、昼間の自由席は混んでおりました。東京駅を発車して間もなく、通路に立ちんぼしている三人の親子を見掛けました。手招きしたら私と目が合った男の子は、そばに来てくれたのです。

 「どうぞ!」私の腰掛けていた席を彼に勧めました。「妹もいるよ」彼は後方を指差します。「済みません」若い母親は、ゆっくりと深く一礼してくれました。「優しいお兄ちゃんね。何年生?」と、彼に尋ねたのです。

 「僕は一年生。妹は幼稚園の年少組。山形県東根市の親戚に行くの」彼は、はきはきと答えてくれましたが腰掛けようとしません。それどころか彼の口から意外な言葉が返ってきたのです。「おばちゃんが可哀相だよ」と。大変驚きました。反対に、七十二歳の私を心配してくれたのです。胸がじんとして「おばちゃんは大丈夫よ」そう言って、幼い兄弟の頭をなでてやりました。すると今度は、「十五分ずつ交代で腰掛ければ皆が楽ちんだね」と、何気なく話すのです。私は彼の名案に感心して、すぐ話に乗りました。

 先ず妹から腰掛けましたが、彼は腕にはめたアニメ時計の時間が気になるようです。でも座席に埋もれるようにして眠っている妹の顔を見て、私は言いました。

 「このまま寝かせてあげようね」

 彼は首を小さく縦に振り「ごめんなさい」母親と一緒に謝ってくれたのです。彼の一言に色んな思いが込められているようで、感無量になりました。三人の親子に感謝と思いやりの心を教わり、温かな気持ちにもなりました。お互いに旅の無事を祈り、私は一足先に山形駅で下車したのです。

 愛知県で暮らす私は古里へ帰る途中、一つの座席を囲み車内で出会った情景です。

 「私こそ親切にして頂き本当にありがとう」時々思い出しては、古里、山形県に繋がっている空を仰いでいます。